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2018/10/09 22:42
『黄昏』と言う名のベルギーのレコード・レーベル『クレプスキュール(Les Disques du Crépuscule)』
前回の所属する女性アーチストに続き、今回は男性アーチストを紹介します。
まずはポール・ヘイグからいきましょう。
スコットランドのポストパンク・バンド「ジョセフK」の元ヴォーカルのポール・ヘイグ(Paul Haig)は82年からソロ活動を開始。クレプスキュール・レーベル周辺のアーチストとの交流からベルギーに居を移し、ソロ・シングル「ラニング・アウェイ」をリリース。スライ&ファミリーストーンの曲をエレポップ風味でカバーしUKインディー・チャートの19位まで上昇し、翌年には、グレース・ジョーンズなどアイランド・レコードの所属アーチストのプロデュースや、後にはデュラン・デュランやトンプソン・ツインズのプロデュースで有名になるアレックス・サドキンのプロデュースでファースト・ソロ・アルバムの「Rhythm of Life」をクレプスキュール(とアイランド・レコード)からリリース。全英82位どまりと商業的には成功とはいきませんでしたが、チープなシンセのエレクトロ・ファンクという独自のサウンドを展開し注目されました。
Paul Haig - Running Away
彼の音楽は、当時のクレプスキュール勢のサウンドとは一線を画していますが、デジタル・ファンクに移行するスクリッティ・ポリッティにも影響を与えただろう独特なエレポップ・ファンクは、クレプスキュール・レーベルに重要な色彩を加えました。
今年2018年には「The Wood」というニュー・アルバムをリリースし、健在さをアピールしています。
お次はベルギーの音楽家であるウィム・メルテンです。
ウィム・メルテン(Wim Mertens)はミニマル・ミュージックや現代音楽の分野の研究者であり、かつ作曲家として活動していた人でしたが、80年代に自ら演奏活動を開始し、ソロ名義や「ソフト・ヴァーディクト」の名で作品をクレプスキュールからリリースするようになりました。
クレプスキュールでは、いまのところ最もリリース数の多いアーチストで、約40作のアルバムをリリースしています。2000年代には、EMIのクラシックのレーベルから世界的に作品をリリース。現在は自らのレーベルからコンスタントに作品をリリースしています。ヒット・チャートとは無縁のクラシカルで音数の少ないアンビエントなサウンドで、クレプスキュールのイメージ付けの一翼を担いました。
Soft Verdict (Wim Mertens) - Close Cover
三番目はタキシード・ムーンです。
タキシード・ムーン(Tuxedo moon) は サンフランシスコのポスト・パンクというかプレ・パンクなバンド。アメリカのめだま集団「レジデンツ」のラルフ・レコードから作品をリリースし徐々に有名になっていきました。クレプスキュールからのリリース作は多くはありませんが、メンバー(スティーヴン・ブラウン、ウィンストン・トンら)のソロ作の(初期の)多くはクレプスキュールからリリースされています。
特にヴァイオリンやヴォーカル担当のブレイン・L・レイニンガー(写真右端のひと)は、他のクレプスキュールのアーチストのレコーディングやライヴに頻繁に参加し、彼自身の作品もクレプスキュールから多数リリースしています。あやしげな口ひげがトレード・マーク。現在は剃ってしまったようです。サウンドはエレクトロ・アヴァン・ポップといったところ。
Blaine L Reininger - Mystery and Confusion
最後に、シングル1枚しかリリースしていないのでちょっと反則ですが、ペイル・ファウンテンズもあげときます。
ペイル・ファウンテンズ(The Pale Fountains)はイギリスのリヴァプール出身のバンドです。後にヴァージンから「パシフィック・ストリート」という名作をリリースするギターポップ/ネオアコの重要バンドですが、デビュー・シングルはクレプスキュールからでした。そのシングル「サムシング・オン・マイ・マインド」を。
Pale Fountains - (There's Always) Something On My Mind
サウンドも映像をすばらしい。さいこー。2013年にはクレプスキュールからコンピレーション・アルバムをリリースしています。
クレプスキュールからは、当然ながら、紹介した彼ら以外にも様々なアーチストが作品をリリースしています。初期にはノイズやインダストリアル・ミュージックのキャバレー・ヴォルテールや、ネオアコのアズテック・カメラなども、オムニバス・アルバムに作品を提供しています。そういった作品が収録されている初期のオムニバス・アルバムはどれもすばらしいので、アーチストにこだわらず、そのあたりから聴き始めるのも良いかもしれません。
近いうちに、検索に「Crépuscule」というカテゴリーを作って、クレプスキュールからのリリースものを探しやすくしようと思ってます。
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ポール・ヘイグの在庫作品
ウィム・メルテンの在庫作品
ブレイン・L・レイニンガーの在庫作品
ペイル・ファウンテンズの在庫作品
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