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2019/03/05 01:50

日本にいる300人のドゥルッティ・コラムのファンの方へ。


去年、ある1冊の洋書に出会いました。そのタイトルは「The Day I met Vini Reilly:An Anthology」
著者名はなく、Selected by Jeremy Wormanと書いてありました。



ネットでVini ReillyとDurutti Columnを検索していて引っかかった本でした。

ファクトリー・レコードの顛末や、ジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダー関連本は多数出版されていますが、ドゥルッティ・コラム関連のものは皆無。彼らのことが書かれたデータ本やノンフィクションはないものかと、たまにネットで探したりしていました。そんなときに発見したのがこれです。早速アマゾンのマーケットプレイスでイギリスの書店に注文しました。

届いてみると、それは短編小説集で「The Day I met Vini Reilly」は10編の短編小説のなかの1篇でした。

つまりドゥルッティ・コラムに関するデータ本でもないし、ノンフィクションでもありませんでした。ちょっと落胆したものの、実際に読んでみると、また違った感情がわきあがってきました。端的に言って著者にシンパシーを感じました。これは、私(マメシバ)のことを書いているのだと。著者は同志だ。

著者のウィル・ケンプ(Will Kemp)は環境プランナーを本業とする傍ら、詩人や小説家として活躍するイギリス人です。


ケンブリッジ大学とイーストアングリア大学を卒業。いくつかの詩や小説の賞を受賞し、数冊の本を出版しています。
本作「The Day I met Vini Reilly」は、イギリスのインディペンデントな出版社である「Cinnamon Press」のショート・ストーリーの賞を受賞し、他の受賞作品と共に1冊の本に編纂されました。短編集の本のタイトルになっているのですから、彼の作品がファースト・プライズということでしょう。

というわけで、内容がよかったので、是非いろんな人に読んでいただきたいと(趣味の)翻訳を実施。今回のブログに載せることにしたというわけです。

で、はじめに断っておかないといけないのは、このブログに書いた文章は翻訳というより抄訳であるということ。それと、時制を過去形にしてあるということです。

抄訳なのは、まあつまり長くなってしまうからという理由ですが、時制を過去にするというのは、原書が現在形で書かれていて内容がわかりづらいからです。現在起こっていることとして書いているところがこの小説の肝であり味であり、評価されたポイントだとは思うのですが、それをそのまま訳すのはむずかしいし、文章がわかりにくくなってしまいます。なので、内容を伝えるという第一義をいいわけにして、過去形にしました。

ただ、最初に言ってしまっては実もふたも無いですが、それほどのことが起こる小説でもありません。

ともあれ、ブログはその3くらいまで続きそうです。では。


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『僕がヴィニ・ライリーに会った日』 第1章


「ヴィニはまったくもって国際的なセレブじゃないけど、いっぺん好きになると、とてもとても愛しいやつなんだ」~ 故トニー・ウィルソン ファクトリー・レコード創設者


 9月11日、何が起きているのかを知ったそのときに僕自身が何をしていたのかは思い出せないけれど、ドゥルッティ・コラムを初めて聴いたときのことは今でも覚えている。
 
 僕は16歳だった。イースター・ホリデーで友人とロンドンを訪れたときのことだ。表向きは、学校で教わった演劇をロンドンで観る旅だったけれど、実際に僕らが学ぶことは、パブではどうふるまうべきかということと、ソーホーでポルノ映画を観ることだった。



 その旅のある日の午後、レスター・スクウェアで時間をつぶしていた僕は、なんとなくレコード屋に入ってみた。すると、その店の中には、ロックでもクラシックでもない、いやそのどちらとも言えるような、とても美しい音楽が流れていた。耳に残る独特の雰囲気のギター。繊細で複雑な、上昇して下降するような、遠くにあるヴォーカルとピアノとドラムのサウンド。僕はこんなのを今まで聴いたことがなかった。これは買わねば。

『え~と、すみません。今かかってるの何ですか?』
カウンターにいる店員に聞いた。
「ザ・ドゥルッティ・コラム」
『ザ…なんて?』
「ザ・ドゥルッティ・コラムだよ。ヴィニ・ライリーというギタリストともうひとり。マンチェスターのファクトリー・レコード」
『ファクトリー?』
「そう。ジョイ・ディヴィジョンと同じレーベル。でもジョイ・ディヴィジョンとはまったく違ったサウンドだけど」
『それで、このレコードはなんていうんですか?』
「LC」
『えるしい?』
「ロッタ・コンティニュアの短縮した言葉で、ラテン語で、意味は戦いは続いているとか、そんな感じの」
『すげ~。それで、ドゥルッティ・コラムの意味は?それもラテン語?』
「知らないなあ。ジャケットとってくるよ」

 店員は、裏からレコードを持ってきてジャケットを僕に手渡した。それは白地に赤とオレンジ色の水彩の殴り書きがしてあるものだった。繊細で変わっていた。その音楽と同じように。

『ほかにはあります?』
「ああ、2枚アルバムがあるよ。アナザー・セッティングと、ええと、リターン・オブ・ザ・ドゥルッティ・コラムね」

 彼がその2枚のアルバムを取りに行っている間に、僕はLCの収録曲のタイトルを覚えた。Sketch for Dawn、Portrait for Fraser、Detail for Paul。彼らはアート・スクール出にちがいない。タイトルが本当にクールだ。
「はい、これね」店員は僕の前に2枚を置いた。



『3枚ともください』
僕は言った。最後のおこづかいが吹っ飛び、ソーホーでポルノ映画を見るチャンスも吹っ飛んでしまった。
そして、僕はドゥルッティ・コラムはポルノ映画よりいいものだってことを知ることになる。


 立ち止まっていても時は流れる。実際に22年が経った。学校は大学まで続き、ガールフレンドは出会って去っていき、トーリー党は労働党に代わって、政権はまた労働党からトーリー党に代わった。マレット・ヘアーはフェザー・カットに変わり、その後ヘアジェルの出現によって、僕はいくつものヘア・スタイルを発明した。

 そんな時代の変化のなかでも、ひとつだけぐらつかないものがある。それはドゥルッティ・コラムの輝きだ。

 僕はドゥルッティ・コラムのすべてのLP・CDを買い、それを何度も聞き込んだ。ヴィニの独特なすばらしい音楽には一度も飽きることがなかった。彼の音楽は時代を先取りしていると思ったし、同時に、時を超えていると確信した。

  ヴィニは彼のあずかり知らぬところで、僕の人生のサウンドトラックを提供することになった。

 恋をしたとき、20世紀が終わり21世紀になったとき、童貞を捨てたとき、彼の音楽はそこにいた。そして、失恋、両親の死去、そんな喪失感を、心を突き刺す感動的なギターが癒してくれた。僕は年がら年中、僕とおなじくらいドゥルッティ・コラムが好きな特別な女の子の出現を待ち焦がれていた。

  でも僕の心には引っかき傷があった。それは一度もドゥルッティ・コラムのコンサートを観たことがないということだった。彼らはライヴというものをそれほどやっていなかった。そして彼らはファクトリー・レコードだ。つまり、ファクトリーはヒップでオルタナティヴなので、僕には敷居が高かったのだ。マンチェスター人ではなかった僕が彼らのギグのうわさを聞くチャンスもまったくなかった。そして、ヴィニの音楽はすばらしかったけれど、そもそも世間にほとんど知られていなかった。

 しかし、神はインターネットというものを発明した。

 それによって、僕はドゥルッティ・コラムがマンチェスターで演奏することを「発見」した。5分以内に僕は2枚のチケットを購入した。興奮でめまいを感じた。レスター・スクエアのレコード・ショップに入ってから22年、ついに僕はヴィニのライヴ、いやヴィニが生きているのを観ることになった。


~第2章に続く~


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