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2019/06/02 20:05

前回のブログではハッピーになれるエレポップをピックアップしましたが、今回は逆に、心が落ち込むダークで陰鬱なエレポップを選んでみました。



テーマとしては、あくまでエレポップ、シンセポップ、テクノポップという範疇の陰鬱な曲です。なので、まじなゴス・ロック、ポジティヴ・パンクとかは無し。それを含めたらいくらでも選べますな。


とりあえず、サムネイルにもしているクワイエットマンことジョン・フォックスから。曲は「ザ・ガーデン」

John Foxx - The Garden


第1期ウルトラヴォックスの中心人物であるジョン・フォックスの、81年リリースのセカンド・アルバム「ザ・ガーデン」のタイトル・トラックです。暗いだけでなく欧州デカダンな世界観がすばらしい名曲。


次はニュー・オーダー。ファースト・シングルのB面曲の「イン・ア・ロンリー・プレイス」

New Order - In a Lonely Place


ジョイ・ディヴィジョンの3人の残ったメンバーが名前をニュー・オーダーに変えてリリースしたファースト・シングル「セレモニー」のB面曲。タイトルといい、サウンドといい、イアン・カーティスの死を引きずりまくり。ワンコーラスめまでのヴォーカルって、これイアン・カーティスでは?残った3人が交代でヴォーカルをとったんでしたっけ?そんなことを聞いた記憶が。


次は世界で最も知られていて売れているエレポップ・バンドであるデペッシュ・モード。 曲は「リトル15」

Depeche Mode - Little15


1988年リリースのシングルでアルバム「ミュージック・フォー・ザ・マシィズ」からのシングルカット曲です。曲調も音色も暗く、PVも絶望的で、このときのチャート・アクションとしてはイギリスで最高60位。2013年に更新されるまで25年間デペッシュ・モードのシングルの中で最もチャートの低かった曲です。

初期には楽しくポップな曲もあったし、今もゴージャスなサウンドを作り続けているデペッシュ・モードですが、メンバー間の軋轢、薬物中毒、アルコール依存症、自殺未遂など、いくつもダークな面を持っているバンドであることは周知の事実。そういった辛酸を舐めながらも優れた作品をリリースし続けているのが立派です。


さて次はエレポップのオリジネイターとも言うべきクラフトワーク。「鏡のホール」です。

Kraftwerk - The Hall of Mirrors


77年リリース「ヨーロッパ特急」の2曲目。エキスプレスもこれでは止まってしまいます。ゴスの代名詞的バンドであるスージー&ザ・バンシーズもこの曲をカバーしています。

ドイツのバンドの曲を紹介したので、もう1曲ドイツのバンドのものを。


リエゾン・ダンジェルーズの「ミステール・ドン・ル・ブルイラール」

Liaisons Dangereuses - Mystère Dans le Brouillard


DAFのメンバーであったクリス・ハースが結成した3人組。アルバム1枚と1年間の活動のみで解散となったカルト・バンドです。しかしながら、彼らの影響力は大きく、電気グルーヴの石野卓球も彼らからの影響を公言しています。

とてもポップとは言いがたく、ノイズやインダストリアル・ミュージックとの親和性のあるサウンド。アルバムのどの曲を聴いてもぜんぶ暗い。


ダークなエレポップを選んでいくと、多くの場合ノイズ系のアーチストの作品に行き着いてしまったりします。スロッビング・グリッスルとか。でも、それではつまらないので、なるべくそういう傾倒のは弾いているのですが、後に「メタル・ダンス」などで完全にエレポップ・バンドになっ(てしまっ)たSPKは、とりあえず1曲くらい紹介してもいいでしょう。

ノイズ・インダストリアルミュージック界では名曲とされているSPKの「スローガン」です。でも、ぜんぶ聴かなくていいです。

SPK - Slogun


ひどいけどすばらしっ!

オーストラリアのシドニーの精神病院に勤務していた看護人のグレアム・レベルと、彼の患者であったニール・ヒルが1978年に結成したバンドというのもなんかすごいけど。彼らがまだ貧しく攻撃的であった頃79年の作品です。

歌詞が「食べたい、食べたい、食べたい、食べたいよ!」と空耳って聴こえますが、たぶんEveryday everyday エビデイって言ってるんじゃないかな実際は。


SPKに比べたらノイズ度が低いですが、こちらはエレポップという文脈ではなくハードコア・テクノ、ドラムンベースのサウンドで、陰鬱というより凶悪。例外としてピックアップしますが秀作。

エイフェックス・ツインの「カム・トゥ・ダディ」

Aphex Twin -  Come to Daddy


1997年リリース。シニカルでユーモアのあるリチャード・D・ジェームスの作品はどれもシンプルで美しいのですが、これははっきりと怖い。


さて、それではお口直しに、ダークだけど美メロな作品を2曲。

有名すぎですが、ジャパンの「ゴウスツ」です。

Japan - Ghosts


1982年リリース、全英5位を記録。ジャパンの作品の中でもっともチャートを上がった曲です。曲名も幽霊だし、ダークであるのが当然かと。とにかく名曲。


もう1曲は、元コクトー・ツインズのヴォーカルであったエリザベス・フレイザーのソロ・シングル「モーゼ」です。

Elizabeth Fraser - Moses


コクトー・ツインズの作品は、すべてがダークでアブストラクトなものでしたが、決してエレポップという感じではありません。でもこのソロ・シングルはけっこうそっち寄り。アコーディオンとかヴァイオリンの音色が聞こえてくると、どんな曲でも悲しく聴こえてしまうというのは人間の性。


さて、そろそろ終盤。


実は、ダークで陰鬱なエレポップを探すと日本人の作品ばかりになってしまうのです。

まずは、ヒカシューの「幼虫の危機」

ヒカシュー - 幼虫の危機


巻上公一の個性的過ぎるヴォーカル。ドラムレスのチープなシンセ・サウンド。歌詞が「楽しいな、~が死ぬなんて」の繰り返しと絶叫。落ち込みます。音源はメジャーデビュー前の78年のもので、より凶悪さが滲み出しています。


そして悪魔の子守唄を次に。フューの「終曲」です。

PHEW - 終曲


80年にパス・レコードからリリースされた元アーント・サリーのフューと坂本龍一のコラボ作。有名曲です。怖い。パス・レコードでは最も売れたレコードなのでは?

ここからは坂本龍一関連作品ばかり。

Yellow Magic Orchestra - MASS


YMO81年リリース作「BGM」の収録曲で細野晴臣の曲ですが、これはウィンター・ライヴのヴォージョンです。思い切り弾き倒す教授のピアノがすごすぎて怖い。オリジナルのスタジオ・ヴァージョンもダークなので聞き比べるのもよろしかろうと。


呪いの13曲目はその坂本龍一の「ジ・エンド・オブ・ヨーロッパ」です。

坂本龍一 - The End of Europe


怖くて夜中に聴けない。「B2-Unit」に収録。マイク・オールドフィールドやゴブリンみたいなホラー映画のサントラより怖い。PVではないけどRaymond Larrettさんが作った映像がぴったり。なんせヨーロッパの終焉ですからね。

ダークなエレポップというと坂本龍一関連作品が多くなると言うこの事実。

エレポップは「ピコピコ」なんていって明るいというか、能天気なイメージがありますが、こんなダークなものもあるということでした。10曲では収まらなかったですね、14選です。

その14選め。

最後も坂本龍一

オリジナル・アルバム未収録。明るい終末ってことで「ハッピー・エンド」

坂本龍一 - Happy End


全然ハッピーじゃないじゃん!


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