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2020/04/18 09:10

 最近、エレクトロ・ポップ黎明期のイギリスのアーティストの作品のみを集めた興味深いコンピレーションCDが日本で発売されました。その名も『テクノにポップが付いた時代。そしてコンピューターは涙する』です。



 選曲・監修はイギリスの3人組バンドであるセイント・エティエンヌ(Saint Etienne)の男性メンバーのボブ・スタンレー(Bob Stanley)とピート・ウィッグス(Pete Wiggs)のふたり。本盤のほかにも、このふたり監修のコンピレーションがリリース元のエース・レコード(Ace Records Ltd.)から数枚発売されていることから、彼らの音楽への造詣の深さをうかがい知ることができます。

 原題は『The Tears Of Technology』で「テクノロジーの涙」いう意味ですが、邦題はちょっと匂わせな長いものになっています。これは解説を書いている「ロック漫筆家」の安田謙一氏のアイデアによるものではないかと推測します。「電気羊はアンドロイドの夢を見るか」を連想するおもしろいタイトルではあるのですが。

ではその『涙』とは何のことでしょうか。

 端的に言ってこの曲が説明しています。というか収録されているこの曲が本盤のコンセプトのすべてを表しています。

ジョン・フォックス『ヨーロッパ・アフター・ザ・レイン』

 バンド名に感嘆符「!」がついていた頃のウルトラヴォックスの元フロントマン81年リリースのソロ・シングルです。全英シングル・チャート40位。日本ではスクーターのCMソングになりヘヴィローテーションされたリリカルでエモーショナルなシンセ・ポップ・チューンです。

 つまり、叙情的なシンセ・ポップ・ナンバーばかりをピックアップしたのが本盤なのです。泣くほどのことではありませんけど、じわっと来るというか。なので、内容を表すタイトルとするなら原題に沿ったかたちで「テクノポップの涙」とか「泣けるシンセポップ」とかのほうがよかったのでは?それじゃ「パンチ」が足りないか。

 収録曲は20アーチスト20曲。オリジナルのイギリス盤は21曲収録で、日本盤では1アーチストがオミットされています。以下アーチスト名・曲名を収録順に並べます。

1. チャイナ・クライシス『ジーン・ウォークス・イン・フレッシュ・フィールズ』 
2. ターコイズ・デイズ『グレイ・スカイズ』
3. シンプル・マインズ『リアル・トゥ・リアル』
4. イラストレーション 『タイダル・フロウ』   
5. ケア 『アン・イヴニング・イン・ザ・レイ』
6. ソフト・セル『ユース』
7. ジョン・フォックス『ヨーロッパ・アフター・ザ・レイン』
8. パトリック・フィッツジェラルド『パーソナル・ロス』
9. アイレス・イン・ギャザ『ライツ・オブ・エイプリル』
10. オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダーク『シーランド』
11. トーマス・リーア『プライヴェート・プレイン』 
12. エレクトリック・サーカス『ダイレクト・ラインズ』
13. ザ・ペイル・ファウンテンズ『アンレス』
14. クリス&コージー 『オクトバー (ラヴ・ソング)』
15. ニュー・ミュージック『ア・マップ・オブ・ユー』
17. ポール・ヘイグ『クリスティーナ』
18. ザ・ティアドロップ・エクスプローズ『タイニー・チルドレン』
19. オッペンハイマー・アナリシス『ビハインド・ザ・シェイズ』
20. トレバー・バストウ『フェザー・ベッド』

 有名どころは3分の1くらいかな。それ以外は無名ばかりで、曲とアーチスト名がどっちか判断つかないようなアーチストが多いです。念のため繰り返しますが、カッコで囲ったほうが曲名です。  

  今更コンピなんて不要という音楽ファンもいると思いますが、収録曲の音源の多くは、手に入れるには時間とお金のかかるレアなものばかり。そしてそれらが(ほぼ)全部良い曲なので、とりあえず本盤は『買い』です。今時1枚組のCDに3000円出すのはちょっと…というのは言いっこなし!


 では、収録曲の中のいくつかをご紹介します。

 
4.イラストレーション 『タイダル・フロウ』 (Illustration / Tidal Flow)

  イラストレーションは79年に結成し2年で解散したストックポート出身のニューウェイヴ・バンドです。81年インディ・レーベルのサム・ビザールからリリースされた「Some Bizzare Album」というコンピレーションでこの曲が披露されました。デペッシュモード、ザ・ザ、ブラマンジェ、ソフトセルなどの他の収録アーチストを差し置いて1曲目に収録された名曲です。初期フラ・リッポ・リッピのような叙情的なシンセ・ポップですが、この盤に収録された作品以外、彼らの残された録音物はありません。


5.ケア 『アン・イヴニング・イン・ザ・レイ』(Care / An Evening In The Ray)

 え?キュアの間違いじゃないの?と思ってしまうバンド名のケア。83年にリヴァプールで、元ビッグ・イン・ジャパンのイアン・ブロウディーとポール・シンプソンによって結成された二人組ユニットです。ブロウディーは後にライトニング・シーズを結成して成功。この曲はケアのセカンド・シングル「My Boyish Days (Drink To Me)」のB面曲で、サウンドもヴォーカルも切ない名曲ですが、彼らはもう1枚シングルをリリースして解散となりました。


 本盤に収録されているのが一番意外なのはこのバンドでしょう。

13.ザ・ペイル・ファウンテンズ『アンレス』(The Pale Fountains / Unless)

 ペイル・ファウンテンズは80年にリバプールで結成された5人組バンドで、一般的にはギターポップ/ネオアコのカテゴリーのバンドとして知られています。本作は84年リリースのアルバム「Pacific Street」に収録されたナンバーで、ギターの音が聞こえない、完全にエレポップな曲です。メンバーにキーボーディストはいないので、80年代イギリスのニューウェイヴ/シンセポップのバンドのプロデュースを多々やったプロデューサーのハワード・グレイのアイデアによるものでしょうか。


14.クリス&コージー 『オクトーバー (ラヴ・ソング)』(Chris & Cosey / October(Love Song))

 元スロッビング・グリッスルのコージー・ファニ・トゥッティとクリス・カーターのインダストリアル・カップルのユニット。ラフ・トレードからの83年リリースのシングルで、意外にも本盤の中で最もポップな曲です。副題の通りのキュートなラヴ・ソングです。


最初にジョン・フォックスの曲を本盤を代表する曲として貼りましたが、この曲は本盤の裏メインと言える曲です。

15.ニュー・ミュージック『ア・マップ・オブ・ユー』(New Musik / A Map Of You)

 ニュー・ミュージック(New Musik)は、ダムドのキャプテン・センシブルの「Happy Talk」やマリー・ウィルソンなどのプロデュースでお馴染みのトニー・マンスフィールドが在籍していた英国のポップ・バンドです。この曲は80年リリースのアルバム「From A to B」の収録曲。同アルバム収録の「Living by Numbers」は全英シングル・チャート13位のヒットとなりました。シンセの音色のチョイスが秀逸で、透き通るようなやさしい音からノイズまで使って作成されたサウンドが素晴らしい。この曲を聴くたびにじわっときてしまい、間奏のアルべジオでは本当に涙が出そうになります。高橋幸宏ともお友達のトニーですが、この曲を聴くと、ふたりがお互いに影響し合っていたことを確信します。


 最後は、日本盤にするにあたり除外されてしまった1曲を。

ターコイズ・スウィミング・プールズ「ザ・ウィンズ」(The Turquoise Swimming / Pools The Winds)


  ターコイズ・スウィミング・プールズは、後にティアドロップ・エクスプローズのメンバーになるメンバーふたりを含む3人組バンドです。THE  KLFを結成するビル・ドラモンド主催のレーベルZoo Recordsのコンピレーション「To the Shores of Lake Placid」に収録された曲で、彼らの作品はそのコンピに収録されたこの曲ともう1曲の2曲がすべてです。


 このコンピレーションをきっかけに、80年代シンセ・ポップを再評価・再認識する音楽ファンが増えたらうれしいと思っています。
収録アーチストの在庫商品は以下。どうぞご覧ください。


・チャイナ・クライシス

・シンプル・マインズ

・ソフト・セル

・ジョン・フォックス

・アイレス・イン・ギャザ

・オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダーク

・ザ・ペイル・ファウンテンズ

・ザ・ティアドロップ・エクスプローズ


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