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2021/08/28 20:59
変異株や感染者増減の波を作りながらコロナウイルスはまだまだ世界中に蔓延しています。
そんな中、コロナの影響で困窮した人や、奮闘する医療従事者のためのチャリティー・ソングが色々発表されています。ジャスティン・ビーバーがアリアナ・グランデとデュエットしたチャリティー・ソングをリリースしたりとかありました。しかしながら、USA・フォー・アフリカやバンド・エイドのような、たくさんのミュージシャンが集まって歌うというような大規模なチャリティー・ソングは聞こえてきませんね。どうしてだろ。そういうのは時代遅れなのか。
でも、正にそのUSA~やバンド・エイド時代のミュージシャンたちが集結してリリースしたコロナウィルス・チャリティー・ソングがイギリスでリリースされました。その曲はリミッション・インターナショナルの「TOS2020」です。
発起人はイギリスのポジティヴ・パンク/ゴシック・ロック・バンド「ザ・ミッション」(The Mission)のウェイン・ハッセイで、彼らの代表曲である「Tower of Strength」をニューウェイヴやゴス系のミュージシャンが集まって再録し、売り上げをすべて慈善団体に寄付するチャリティー・シングルとしてリリースしました。
ザ・ミッション近影。しゃがんでいるのがウェイン・ハッセイ氏
このチャリティー・プロジェクトは「リミッション・インターナショナル」(ReMission International)と名付けられ、オリジナルと区別するため曲のタイトルを「TOS2020」と変更しています。ちなみに、リリースしたのは2020年8月で、1年前のことなので今頃書いてるのは遅いと言われてしまうかもしれませんが、このチャリティーを知らない人も(日本には)多く、リリース後1年経ってもコロナは収まっていないし、チャリティーは継続中ということなのでご容赦ください。YouTubeのPV数もいまだにそんなに多くないので応援もしたいし。
プロジェクトの参加ミュージシャンは以下。
・ウェイン・ハッセイ(シスターズ・オブ・マーシー、ザ・ミッション)
・ゲイリー・ニューマン
・ロル・トルハースト(当時キュアー)
・ミッジ・ユーロ(ウルトラヴォックス、ヴィサージ)
・マーティン・ゴア(デペッシュ・モード)
・カーク・ブランドン(シアター・オブ・ヘイト、スピアー・オブ・デスティニー)
・バッジー(スージー&ザ・バンシーズ)
・アンディ・ルーク(スミス)
・ビリー・ダフィー(カルト)
・ケヴィン・ハスキンス(バウハウス、ラヴ・アンド・ロケッツ)
・マイケル・アシュトン(ジーン・ラヴズ・ジザベル)
・ジェイ・アシュトン(ジーン・ラヴズ・ジザベル)
・リチャード・フォータス(サイケデリック・ファーズ)
その他オール・アバウト・イヴのジュリアンヌ・リーガン、スローダイヴのレイチェル・ゴスウェル、ナイン・インチ・ネイルズの準メンバーのロビン・フィンクなど、80年代ニューウェイヴやポジティヴ・パンク、90年代のオルタナが好きな人の琴線に触れるミュージシャンが多数参加しています。
注目したいのは、双子なのに何度も仲違いし、お金やネーミングライツでどろどろの法廷闘争を経験し、現在はふたつのジーン・ラヴズ・ジザベルが存在し(反目しながら)活動しているというアシュトン兄弟がふたりして参加しているところ。恐らく仲直りしたわけではないでしょうが、GLJのファンは涙を流すはずです。
さて、この曲のオリジナルですが、元々は1988年にザ・ミッションの6枚目のシングルとしてリリースされました。静かなトーンで派手さのないサウンドの上に、エモーショナルなヴォーカルが乗るという曲で、全英シングル・チャートの12位を記録し、アイルランドでは10位まで上がりました。94年にはリミックス・ヴァージョンがリリースされ、全英33位まで上昇。ザ・ミッションと言えばこの曲という代表曲となり、ライヴの締めには必ずこの曲が演奏されるようになりました。
では88年のオリジナルをどうぞ
The Mission - Tower Of Strength
でも、なぜこの曲がチャリティー・ソングになるのかというのがそもそも疑問。だって、おどろおどろしくて厭世的で真っ黒なポジティヴ・パンク/ゴシック・ロックのバンドの楽曲でしょ。確かにそう思いますが、理由は歌詞の内容にあるのです。
タイトルの「Tower of Strength」とは直訳して「強さの塔」ですが、「頼りになるもの」とか「頼れる人」という意味です。
歌詞の内容はこんな感じです。ちょっとじわります。
~
あなたは、臥せっている私を勇気づけてくれます。
あなたは孤独と恐怖の中にいる私を見守ってくれます。
あなたは私に施してくれますが、私はもっと必要なのです。
誰も私のことを気にかけてくれないと思うと、私の心は引き裂かれてしまうのです。
私にとって
私にとって
私にとってあなたは強さの塔です
あなたは私を救ってくれます。
あなたは私の信仰であり、希望であり、自由です。
周りが暗闇に包まれている時、あなたは私のために明るく輝いてくれます。
あなたは導きの光です。
私にとって
私にとって
私にとってあなたは強さの塔です
あなたに抱かれているとき、私はあなたの情熱と心を感じます。
あなたのキスは天国。そして救われます。
私にとって
私にとって
私にとってあなたは強さの塔です
~
本当はラヴ・ソングかもしれませんが、このコロナ禍の今聴くと、献身的な医療従事者のことを歌った歌詞としか思えません。
実は、チャリティーとしてリリースされる前から、イギリスのNHS(国民保険サービス)の医療従事者たちはオリジナルの「Tower of Strength」を自分たちのアンセムとして、聴いたり歌ったりしていたそうなのです。この曲で自分を鼓舞していたのですね。そういう経緯もあり、ウェイン・ハッセイは本作を再録してリリースすることにしたということです。
それではTOS2020のシングル・ヴァージョンをお聴きください。
ReMission - TOS2020(single Version)
映像も胸に刺さります。サウンドもオリジナルよりドラマティックです。
でも考えてみると、そもそもチャリティーと身構えたり、寄付目的ということで聴かなくていいんですよね。参加ミュージシャンや楽曲に興味があったり、実際聴いてみてよかったら、デジタルでもフィジカルでも、楽曲を購入すればいいのです。しかもシングル1曲が、ダウンロードなら99ペンス(150円)。4曲入りCDが6ポンド(900円)。12インチ・アナログ盤が12ポンド(1800円)とお安くなっています。購入して自分が楽しめて、結果的に医療従事者や経済的困窮者などの助けになるなら一石二鳥じゃないですか。ご興味ありましたらぜひご購入を。
THE TOS2020 PROJECT
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