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2022/01/12 15:56

バブルに向かって突き進んだ日本の80年代はテレビの黄金時代。企業はどんどんテレビ・コマーシャルを打ち、視聴者は大量のCMにうんざりしつつも、芸術的であったりインパクトの強い映像コンテンツに惹かれたものです。

そして、CMに使われた所謂CMソングがオリコンのランキングを席捲するようにもなりました。今ではスタンダードになった名曲も多々あります。そんな中で、こんなのあったの?というものや、そうそう、それあったねえ、という秀逸なCMソングを大雑把に「洋楽ニュー・ウェイヴ」のカテゴリー限定で集めてみました。


まずは、何と言っても80年のデヴィッド・ボウイ「クリスタル・ジャパン」です。

「クリスタル・ジャパン」(Crystal Japan)は宝焼酎の焼酎「純」のCMに使用され、映像にはボウイ自身が出演しています。この曲は80年の「スケアリー・モンスターズ」(Scary Monsters)の制作過程で作曲し録音されたもので、要はアルバムのアウトテイクでCMのために作ったものではないですが「純」のイメージにぴったりで、おあつらえ向きだったということでしょう。当時のロック・ファンは、あのデヴィッド・ボウイがテレビCMに出ているのを観てびっくり仰天だったはずです。でも後のインタビューでは、ボウイはこのCM制作・出演について「Money is useful thing」と発言しています。なるほど。

David Bowie - Crystal Japan


このCMもあって、日本では「クリスタル・ジャパン」をA面にしたシングルがリリースされました。ボウイが歌っていないインストで、そしてあまりに陰鬱・重厚なサウンドなので、海外では当然ながらシングル・リリースはされていません。オリジナル・アルバムにも未収録です(後にシングル「Up The HIll Backwards」のB面やコンピレーションには収録されました)。いきなりカテゴリー的にどうなん?と言われるかもしれませんが、グラムロック期終了後から「Let's Dance」リリース前までのデヴィッド・ボウイのサウンドは「ニュー・ウェイヴ」でしょう。

CMにはいくつかのヴァージョンがありますが、下のものは3分超のPV的な映像です。両方とも映像制作者でデヴィッド・ボウイの熱狂的ファンであるNacho Videoが復元したもので、映像発掘に関して彼の功績はとても大きいです。

David Bowie - Crystal Japan Promo


お酒のCMには芸術性が高かったり、インパクトのある曲を使ったものが多かった記憶があります。今の時代の、ビールを飲んで爽快!みたいなわかりやすいCMではなく、ウイスキーを「イメージ」で飲ませる秀逸なCMがたくさんありました。

そんな中では(一時期の)サントリーのCMは特に素晴らしいものばかりでした。

79年、サントリー角瓶のCMソングとして流れたのはドイツのシンセバンド、クラフトワークの「ショールームダミー」です。

kraftwerk - Showroom Dummies


あ、CMは79年のものですね。まあほぼ80年代ということで許してください。
「ショールームダミー」(Showroom Dummies)は、77年リリースのアルバム「ヨーロッパ特急」(Trans Europe Express)に収録。グラスを傾けているのはデザイナーの三宅一生で、CMを企画したコピーライターの長沢岳夫は、三宅を主人公にサントリーのCMを数本制作しています。

こちら↓はヘリコプター編。ストーリーがよくわからないけど、なにかアクティヴな三宅一生。今もですが、ヘリコプターに乗るシニア男性のCMって多い気が……。

Ultravox - New Europeans


曲はイギリスのニューウェイヴ・バンド、ウルトラヴォックスの「ニュー・ヨーロピアンズ」(New Europeans)です。アルバム「Vienna」に収録。ギターのカッティングがとてもかっこいい曲ですが、日本以外でこの曲をA面にしたシングルはリリースされていません。日本だけのリリースの理由として、このCMの評判があったということに疑いの余地はないでしょう。

そして極めつきは手漕ぎボート編。ホルガー・シューカイの「ペルシアン・ラヴ」を使ったヴァージョンです。

Holger Czukay - Persian Love


「ペルシアン・ラヴ」(Persian Love)は、ドイツのロック・バンドCANのベーシストであるホルガー・シューカイのソロ・アルバム「Movies」に収録されている曲ですが、このCMがあまりにも好評につき日本では82年にこれをA面に、アルバムの収録曲の中で最もポップな「Cool In The Pool」をB面にカップリングしてシングルとしてリリースされました。たゆたうボートに乗るひとりの短髪の男性。この時、三宅一生は44歳。渋すぎる。それにしても、こんなにパンチパーマが似合う男性はいないでしょう。

これらの映像を制作したのは写真家で映像作家である操上和美で、彼は他にも名作と言える数々のCM映像を制作しています。そのひとつがPARCOの一連のCMで、これ↓はイギリスのシンセポップ・アーティストであるゲイリー・ニューマンを起用したものです。

Gary Numan - Conversation

79年リリースの全英ナンバーワン・アルバム「The Pleasure Principle」に収録されている曲「Conversation 」ですが、こちらは日本でも海外でもシングル・リリースはされていません。シングル・カットされていない7分半もある長尺の曲(の一部)を採用したのは、クリエイターの感性ということでしょうか。パルコのCMはおしゃれで尖っている一方で、ちょっとふざけた部分もあり、ゲイリー・ニューマンがフィーチャーされたのも、音楽性というより爬虫類というかアンドロイド的なルックスに注目してのことでしょう。ほかにクラウス・ノミを起用したりもしているし。

そして、酒のCMと同じくらい、もしかしたらそれ以上にインパクトがあったのは化粧品のCMです。
ただ、化粧品CMには邦楽が使われることが多く、洋楽ニューウェイヴと限定するとそれほどありません。

そんな中では、資生堂の化粧品「パーキージーン」のCMソング「ティーネイジ・クイーン」が有名でしょうか。CM映像は見つけられませんでした。

Bow Wow Wow - Teenage Queen


イギリスのニューウェイヴ・バンド、バウ・ワウ・ワウ(Bow Wow Wow)の「ティーネイジ・クイーン」(Teenage Queen)は、このCMのために制作されたというスペシャルな曲です。歌詞には商品名であるパーキージーンが入っています。でも実のところ、メロディは82年に本国イギリスでリリースされたシングル「Baby, Oh No」そのままで、歌詞とアレンジを変えて録音し直したものなのです。使い回しですね。さすが歴戦錬磨の仕掛人、マルコム・マクラーレン。あざとい。これは当然日本のみのシングル・リリースです。

ニュー・ウェイヴかどうかはともかく、洋楽が多く使われたCMには自動車やスクーターのものも多いです。
自動車のCMには王道というか、流行りのロック・チューンが使われることが多かったですが、中にはけっこうマニアックなものもありました。

その中でもホンダはなかなか通な曲をCMソングにしていました。例えばこれ。81年スクーター「リード」と「リーダー」のCM曲である「ハウ・マッチ・アー・ゼイ」です。

Holger Czukay, Jaki Liebezeit, Jah Wobble - How Much Are They?


CANのホルガー・シューカイとヤキ・リーベツァイト、元パブリック・イメージ・リミテッドのジャー・ウォブルの共作曲です。日本ではこの曲をA面、B面にホルガー・シューカイの「Persian Love」を収録したシングルが発売されました。元々12インチ4曲入りでリリースされた作品ですが、7インチでリリースされたのは日本だけです。本作ではシングルB面ですが、ホルガー・シューカイの「Persian Love」が二度もシングル・リリースされたのは日本のみ。ホルガー・シューカイのサウンドは、日本のCMに不思議と親和性があるようです。超短時間の尺のCMでは、ヴォーカル曲よりもアヴァンギャルドなインストのほうが消費者にインパクトを与えることができるということかもしれません。英語詞わからないし。

ホンダのCM曲で、日本だけのシングル・リリースと言えばこれもそう。同じくスクーター「リード」のCM曲でABCの「バレンタイン・デイ」です。

ABC - Balentine Day


ソウルフルなサウンドのニューウェイヴ・バンドABCのデビュー・アルバム「The Lexicon of Love」に収録。このアルバムには「Look of Love」「Poison Arrow」「All of My Heart」という全英シングル・チャートでトップ10入りしたシングルが3曲も収録されていますが、日本ではA面5曲目の単なる収録曲「Balentine Day」がシングル・カットされました。

ホンダはこの他にもイギリスのパンクファンク・バンド、ピッグバッグの「Papa's Got a Brand New Pigbag」をスクーターのCMに使用したりもしましたが、最も有名なのはコンパクトカー「シティ」のCMでしょう。イギリスのニューウェイヴ/スカ・バンドのマッドネスが出演し、そのCM曲「シティ・イン・シティ」(In The City)はヒットさえしました。これも日本のみのシングル・リリースです。有名すぎるので映像は貼りませんが。

調べだしたら段々キリが無くなってきました。SEIKOのCMでブライアン・イーノの曲が使われたり、インスタント・コーヒーのCMにヴァージニア・アストレイの曲が使われたり等々、意外にいっぱいありました。パイオニアのカーステレオのCMには、なんとパブリック・イメージ・リミテッドの「Metal Box」収録曲の「Careering」が使われたりもしました。

では最後に、パイオニアのコンポーネントステレオ「プライベートCD」で使われたカラーフィールドの「風のささやき」で締めましょう。これもCM映像はありませんでした。

The Colourfield - Windmills of Your Mind


「風のささやき」(Windmills of Your Mind)は、スペシャルズ、ファン・ボーイ・スリーの中心人物であったテリー・ホールが結成したカラーフィールドの日本限定リリースのシングルで、このCMのために録音した作品です。オリジナル・アルバム未収録です。
原曲は68年公開の映画「華麗なる賭け」の挿入歌であるミッシェル・ルグランの有名曲で、ダスティ・スプリングフィールドによるカヴァー・ヴァージョンも有名です。日本でも竹内まりやがカヴァーしています。マイナー調の切ないメロディの曲で、カラーフィールドの持ち味であるアコースティックな優しいサウンドにとてもマッチしています。セールス的に苦しんだカラーフィールドですが、本国でこの曲をシングル・リリースしたらそれなりにヒットしたのではないでしょうか。ちょっと残念です(完)

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